歌詞の紹介

歌詞の紹介

歌詞について

うた澤節の曲は、流儀が成立してから、昭和の中頃まで、時代時代に合致した歌詞で作られてきました。これまでに、500曲以上作られたのではないかと想像されます。本ページでは、芝派に伝わる曲を演奏会で披露されるものから、順次更新していく予定です。

哥澤節の代表曲は、それこそ十人十色、聞く人によって様々な答えが返ってくるでしょう。色気の強いものをお好みの方もいらっしゃれば、祝儀曲や男らしい曲を好まれる方もいます。しかし、総じて、現在の演奏会で披露される曲の多くは、絶え間なく唄い継がれ、愛されてきた曲だといえると思います。是非、ご自身で「これぞ代表曲、名曲」といえるものをお探しください。

幕末頃から伝わる曲は、端唄と同じ歌詞であることが多いのですが、微妙に異なることがあるようです。また、芝派の哥澤節(当流派)と寅派の歌澤節の同じ歌詞を比べても、「てにをは」といった些細な相違から単語の違いまで大なり小なり異なっていたりします。中には、意味を解せられないような歌詞もあります。稽古本が早くから登場していたので、不思議に思われるかもしれませんが、口伝を主とした生きた芸能の証だと思います。

どこかで、同じ曲名を端唄や小唄の演奏会でお聴きすることがございましたら、比較されてみるのも楽しいかもしれません。

《うぐひす》 本調子 〔季 仲冬を主に三冬〕

作曲:初代哥澤芝勢以(三代目哥澤芝金)

〽うぐひすの 笹啼き染める 小柴垣 色も香もある 愛嬌に 絆されて咲く 冬の梅 思ひの丈を 年わすれ 早く初音を 待つばかり

《春は賑ふ》 本調子〔季 晩春(旧暦)〕

作詞者・作曲者不詳

〽春は賑ふ 隅田の景色 植ゑ込む松も 色増して 梅の香りの ほんのりと 婀娜な桜に 恋の淵 流れ流れし 水鳥の 今は私の 夫婦連れ

《淡雪》 本調子〔季 三春(旧暦)〕

作詞・作曲年/安政五年 節付/とく女

〽淡雪と 消ゆるこの身の 思ひ寝に 浮名を厭ふ 恋の仲 乱れし ままの 鬢付きや 義理といふ字は 是非もなく 夢かうつつか 朝がらす

文責 木岡史明(東京藝術大学大学院)

凡例 歌詞の表記は、現行伝承による。平仮名は、現代仮名遣い及び発音のままに記す。歌詞の産み字と「ン」で入る場合は、カタカナを下付けで表記する。漢字表記は、執筆者による解釈の一つを記す。空白は、唄の切れ目と関係なく、適宜挿入した。